マルチブラケット矯正で顔に変化はある?現役歯科医師が解説
「矯正で顔が変わるって本当?」
「自分にも変化があるのか知りたい」
このような不安や期待を抱いている方も多いのではないでしょうか。
マルチブラケット矯正は、歯並びを整えるだけでなく、【横顔のEライン】や【フェイスライン】といった顔全体の印象にも変化をもたらすことがあります。
本コラムでは、マルチブラケット矯正による顔の変化について、子どもと大人それぞれの違いや心理面への影響も含めて現役歯科医師が解説します。
これから矯正を始める方にとっては、治療後のイメージを具体的に持つきっかけになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
マルチブラケット矯正で起こる【顔の変化】とは
マルチブラケット矯正は、歯を移動し歯並びを整えることで、顔の変化も引き起こします。主な変化を一つずつ解説します。
出っ歯や受け口が治ることでEラインが整う
矯正によって出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)が改善すると、Eラインが整い、特に横顔のバランスが整います。
「Eライン(エステティックライン)」は、横顔の鼻先と顎先を結んだ直線と唇の位置関係で評価される、美容歯科や形成外科で広く用いられる指標です。出っ歯や受け口によって唇や顎先がEラインから大きく突出していると、顔のバランスが悪く見える傾向があります。
マルチブラケット矯正によって前歯を後方に移動させ、噛み合わせと顎の位置を改善することで、より自然な横顔のラインに近づけます。
フェイスラインがスッキリする
マルチブラケット矯正によって噛み合わせが正常化されると、顎の位置や筋肉のバランスが整い、フェイスラインがスッキリする変化も期待できます。
特に下顎が前方に突出している「受け口」の方では、矯正により下顎が本来の位置に後退し、顎〜口元のもたつきが解消され、顔全体のシルエットがスッキリ整います。
歯の移動により表情筋の使い方が改善される
マルチブラケット矯正は、歯並びと表情筋を同時に整え、自然なリフトアップを叶えます。歯が正しい位置へ収まると口が自然に閉じられ、頬や口角を動かす表情筋が活発化するため、頬がふっくらし、たるみ・ほうれい線も予防可能です。
特に30代以降の女性では、「見た目の若返り」を感じる方も少なくありません。また、口呼吸の改善に伴って、口腔内の乾燥や口臭の軽減も期待できるでしょう。
子どもと大人の矯正|顔に起こる変化の違い・注意点
矯正は、始めるタイミングによって顔の変化にも違いがあります。子どもと大人、それぞれの顔に起こる変化の違いを注意点と併せて解説します。
成長期の子どもは【骨格ごと変わる】チャンス
成長期の子どもは、矯正により顎の骨格そのものが改善する可能性があります。発育途上にある子どもの顎骨は、成長方向をコントロールできるためです。これは、「成長誘導(咬合誘導)」と呼ばれ、顎の位置や大きさのバランスを発育の中で修正できるのが大きな特徴です。
例えば、上顎が前に出すぎている出っ歯や下顎が出ている受け口は、骨格が完成している大人であれば、外科手術による改善が必要になります。しかし、成長期のうちに顎の成長をコントロールすれば、外科的な処置なく改善できる可能性が高まります。
そのため、成長誘導による改善は治療の開始時期が重要です。「永久歯が生えそろう小学校中学年~高学年」が目安になるでしょう。早期の治療によって、鼻から口元、顎にかけてのEラインを整えられるため、口元が自然に閉じ、口呼吸の改善につながるメリットも得られます。
矯正治療を子どものうちに始めるメリットは、以下のコラムで紹介しています。
矯正治療を子どものうちに始めたほうが良い理由
大人は歯の移動と筋肉・皮膚の変化
前述のとおり、大人の顎の骨はすでに成長を終えているため、顎の骨格そのものを改善するには外科手術が適応となります。そのため、マルチブラケット矯正では、筋肉と皮膚の変化に止まります。
しかし、歯並びと噛み合わせの改善によって頬から顎にかけてのラインが整うため、良い変化を実感する方も多く、美容目的での矯正相談も増加傾向にあります。
ただし、矯正治療では歯や顎に力を加えるため、一時的に顎の関節への負荷も高まります。もともと顎関節症の症状がある場合、悪化するケースがあるため注意が必要です。
また、歯や歯ぐきへの負荷によって歯周病が進行しやすくなり、歯肉退縮や歯の脱落のリスクも高まります。そのため、あらかじめ歯周病を治療し、炎症がコントロールされた状態で矯正を始める必要があります。
心理面に与える影響も大きい
歯並びの悪さは、心にも悪影響を及ぼします。
例えば、歯並びが乱れたお子さまの中には、「笑うとからかわれる」「口元を見られたくない」といった理由で、笑顔が少なくなったり、自己肯定感が低くなっていたりする子も見られます。
特に思春期においては、口元の見た目がいじめやからかいの原因になりかねず、リスク軽減として早期の矯正治療が役立つといえるでしょう。
大人の場合も、歯並びや口元が整うと「若々しい印象」や「清潔感がある印象」を持たれやすくなるため、営業職や接客業などの人前に出る仕事や、就職活動でプラスに働く実感を持つ方も多くいらっしゃいます。
矯正による変化は顔だけではない
マルチブラケット矯正は見た目や噛み合わせの改善だけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。
正しい噛み合わせは顎関節や咀嚼筋の負担を軽減し、頭痛や肩こり、首・背中の痛みの緩和につながります。また、歯並びが整うことで歯みがきがしやすくなり、虫歯や歯周病リスクの減少に伴う歯の寿命延長が期待できます。
正しい咀嚼は食べ物の消化吸収を促進し、健康維持にも寄与します。矯正によって噛む力のバランスが整うと、体全体の筋肉バランスや姿勢の改善、運動能力の向上にもつながることが判明しています。
加えて、口呼吸の改善や睡眠の質向上、認知症や誤嚥性肺炎の予防効果など、多くのメリットが期待できます。
歯並びと全身の健康との関係性については、以下のコラムを参考にしてください。
歯並びと全身の健康の関係性
Q1:マルチブラケット矯正で顔の変化はどれくらいの期間で現れますか?
A1:顔の形や印象の変化は、治療開始から3~6か月で徐々に現れはじめ、6~12か月ほどで目に見える変化を実感いただける傾向にあります。しかし、個人差や矯正の難易度によって期間は異なるため、気になる場合は担当の歯科医師に確認してください。
マルチブラケット矯正で変化が感じられる期間の目安は、以下のコラムで詳しく解説しているためぜひご覧ください。
マルチブラケット矯正で変化が感じられる目安とは
Q2:マルチブラケット矯正中に痛みや違和感はどれくらい続きますか?
A2:一般的に、矯正装置を装着した直後や調整後の数日間は、痛みや違和感を覚えやすいとされています。通常、1週間程度で慣れてきますが、症状が長引く場合は担当の歯科医師に相談が必要です。
マルチブラケット矯正中の違和感の原因や対処法は、以下のコラムを参考にしてください。
マルチブラケット矯正で感じる違和感の原因と対処法