リテーナーのお手入れ方法と頻度
リテーナーは正しくお手入れできていますか?リテーナーの洗浄が不十分だと口臭や虫歯の原因となります。
本コラムでは、リテーナーの汚れで生じるリスクと正しいお手入れ方法をご紹介いたします。長期間の装着が必須となるリテーナーのお手入れについて、ぜひご参考にしてください。
リテーナーの汚れで生じるリスク
リテーナーの洗浄が不十分だと、さまざまなリスクが生じます。
リテーナーは1日のほとんどの時間(20時間以上)に渡って装着が必要です。使用期間も長く、適切なお手入れを怠ると汚れてしまいます。
汚れたまま使用し続けると、歯垢が付着し、細菌が繁殖しやすくなります。この細菌の繁殖は、虫歯や歯周病、口臭の原因となるだけでなく、リテーナー自体に臭いが付着し、装着を続けるのが困難になる方もいます。
さらに、リテーナーに付着した細菌が歯肉や粘膜に触れることで、粘膜の荒れやカンジダ感染につながる可能性もあります。
また、リテーナーは矯正後の歯並びを安定させるための「保定装置」であり、装着を怠ると歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」のリスクが高まります。
特に矯正治療直後は歯の周囲の骨が不安定なため、リテーナーを数日サボるだけで歯がずれ始めるケースもあります。
後戻りが進行すると、再矯正が必要になる可能性もあるため、快適にリテーナーの装着を続けるためには、定期的なお手入れで清潔な状態を保つことが非常に重要です。
お手入れ方法と頻度が知りたい!
毎日行うリテーナーのお手入れは、歯ブラシによるブラッシングです。毛が硬いタイプはリテーナーに傷が付くので、やわらかいタイプを選びましょう。歯磨き粉の研磨剤もリテーナーが傷付く原因です。一般的な歯磨き粉は研磨剤を含むことが多いため、研磨剤不使用のものを選びましょう。リテーナー専用の洗浄剤を使うと、ブラシでは除去しきれない汚れを落とせるので臭いもすっきりします。週に1〜2回ほどの頻度で洗浄剤を使用し清潔に保ちましょう。
においや雑菌には熱湯消毒が効果的と考えてしまいますが、熱湯の使用はリテーナーが変形する恐れがあります。毎日のブラッシングと洗浄剤によるお手入れ方法で十分清潔にできます。したがって、熱湯の使用は控え、正しくこまめなお手入れでリテーナーを清潔に保ちましょう。
手入れの頻度
リテーナーを清潔に保つには、毎日のブラッシングが基本です。マウスピース型やプレート型のリテーナーは、食事や歯磨きの際に外すため、1日に1回は歯ブラシを使ってブラッシングをしましょう。
さらに、週に1〜2回の頻度でリテーナー専用の洗浄剤を使用すると、ブラシでは落としきれない汚れや臭いを効果的に除去できます。
それぞれの使用方法を、以下で紹介いたします。
洗浄剤で洗う方法
リテーナーの洗浄には、専用の洗浄剤の使用がおすすめです。
洗浄剤は、ブラシだけでは落としきれない目に見えない細かな汚れや、歯垢、着色汚れなどを効果的に分解し、臭いの原因となる雑菌を除去します。これにより、マウスピースであるリテーナーを清潔に保ち、口臭予防にもつながります。
洗浄剤には主に「つけ置きタイプ」と「泡・スプレータイプ」の2種類があります。
つけ置きタイプは、コップなどの容器に洗浄剤とぬるま湯(40℃程度)を入れ、そこにリテーナーを完全に浸して使用します。つけ置き時間は製品によって異なりますが、一般的には5分から30分程度です。 汚れがひどい場合は、少し長めに浸すと良いでしょう。
泡・スプレータイプは、リテーナーに直接泡やスプレーを吹きかけ、指や柔らかい歯ブラシで優しく洗う方法です。 外出先でも手軽に使える点がメリットですが、泡が隅々まで均一に行き渡らない可能性もあるため、自宅でのつけ置きタイプと併用するのもおすすめです。
また、入れ歯用洗浄剤で代用できる場合もありますが、リテーナーの素材に合わない強力な成分が含まれていることもあるため、できるだけリテーナー専用の洗浄剤を選ぶと安心です。
洗浄後は、洗浄剤の成分が残らないように流水でしっかりと洗い流すことが大切です。 毎日のブラッシングと合わせて洗浄剤を適切に活用することで、歯の健康を維持し、マウスピースを清潔に保つことができます。
歯ブラシで洗う方法
リテーナーの歯ブラシによるお手入れは、毎日行いましょう。
ただし、歯に使う一般的な歯ブラシは毛が硬いものが多く、リテーナーのプラスチック部分に細かい傷をつけてしまう可能性があります。
この傷は肉眼では見えにくいですが、汚れや細菌が付着しやすくなり、不衛生な状態を招く原因となるため注意が必要です。そのため、リテーナーのお手入れには、毛先がやわらかいタイプを選ぶか、入れ歯専用の歯ブラシを使用することをおすすめします。
入れ歯とリテーナーは素材が似ており、入れ歯用歯ブラシはリテーナーを傷つけにくいように設計されています。また、歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多いですが、これもリテーナーに傷がつく原因となるため、研磨剤不使用のものを選ぶか、水のみで優しくブラッシングしましょう。適切なお手入れでリテーナーを清潔に保つことが、口腔衛生を守る上で重要です。
リテーナーを洗浄する際の注意点
リテーナーの洗浄においては、いくつかの重要な注意点があります。
まず、熱湯の使用は絶対に避けてください。
リテーナーはプラスチック製のものが多く、熱いお湯や煮沸消毒を行うと変形してしまう可能性があります。
リテーナーが変形すると、歯に合わなくなり、後戻りの原因となったり、最悪の場合は作り直しが必要になったりすることもあります。洗浄剤を使用する際も、お湯の温度は40℃程度を目安に、ぬるま湯を使用するようにしましょう。
次に、洗浄剤を使用した後は、リテーナーを完全に水で洗い流すことが非常に重要です。
水で流しただけでは洗浄剤の成分が残ってしまう可能性があり、口内に入れるものとして衛生的ではありません。雑に洗い流さず、しっかりと流水ですすぎましょう。
さらに、歯磨き粉の使用にも注意しましょう。
一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多く、これがリテーナーの表面に目に見えない傷をつけてしまうことがあります。この微細な傷に汚れや細菌が入り込みやすくなり、かえって不衛生な状態を招く原因となります。研磨剤不使用の歯磨き粉を選ぶか、水のみで優しくブラッシングするようにしてください。
アルコール消毒液の使用も避けるべきです。
アルコール成分はリテーナーの素材を劣化させる可能性があるため、清潔にしたいからといって安易に使用するのは避けましょう。細菌やウイルスが気になる場合は、専用の洗浄剤を使用することで、効果的に洗い流すことができます。
リテーナーは非常にデリケートな装置なので、清潔を保つために力を入れすぎたり、不適切な方法で洗浄したりすると、破損や変形のリスクを高めてしまいます。臭いや汚れが強いと感じた場合でも、基本的に浸け置き時間を少し長めに取る程度で十分であり、強く磨きすぎないよう注意が必要です。定期的な歯科医院でのクリーニングも活用し、専門家のアドバイスも参考にしながら、適切な方法でリテーナーを清潔に保つようにしましょう。
Q1:リテーナー装着中も通院は必要?
A1:リテーナー装着中も定期的な通院が必要です。初めは月に1回ほど通院します。その後は歯の状態によって、2~3ヵ月に1回と間隔を空けていくケースが多いでしょう。
Q2:リテーナーをつけ忘れていたときはどうしたらいい?
A2:矯正後の歯並びは不安定な状態です。リテーナーを外したままだと後戻りする可能性があります。まずはリテーナーをつけて、違和感や痛みがなければそのまま装着してください。違和感や痛みがある場合は歯並びが変わっている恐れがあります。かかりつけの歯科医院か当院にご相談ください。