不正咬合の改善に役立つ歯科矯正のメリット
不正咬合は、噛み合わせや滑舌に悪影響があるものの「歯並びが悪いだけ」と放置する方も多くいらっしゃいます。しかし、不正咬合は、口腔内だけでなく心や身体にも悪影響を及ぼすことをご存知でしょうか。
本コラムでは、不正咬合が心と身体に与える影響と、歯科矯正治療で不正咬合を改善するメリットについて解説しています。ご自身の歯並びが気になっている方は、ぜひご参考にしてください。
不正咬合が心や身体に与える影響を知ろう
以下では、不正咬合を放置すると起こる悪影響を「心」と「身体」にわけてご紹介します。
【心に与える影響】
不正咬合による歯並びの悪さや顎の歪みは、見た目のコンプレックスにつながります。また、滑舌や歯並びの悪さが原因で積極的なコミュニケーションが取れず、対人関係を上手に築けないケースもあるでしょう。そのため、精神的ストレスを抱える可能性が高いと考えられています。
【身体に与える影響】
不正咬合は十分な歯磨きが行えないため、虫歯や歯周病にかかりやすい状態です。また、一部の歯や周辺組織に過剰な咬合力がかかるため、歯の健康を損なうリスクも高まります。さらに、噛み合わせの悪さから、肩こりや頭痛、腰痛など全身に症状が出現する場合もあります。
不正咬合はむし歯や歯周病の原因に
不正咬合は見た目の問題だけでなく、お口の健康に様々な悪影響を及ぼすことがあります。
特に、むし歯や歯周病のリスクを高めることが知られています。歯が不規則に並んでいると、歯ブラシが届きにくい箇所が生じやすく、そこにプラーク(歯垢)が溜まりやすくなるためです。
溜まったプラーク中の細菌が酸を作り出し、歯を溶かすことでむし歯が発生します。また、歯ぐきに炎症を引き起こし、進行すると歯を支える骨が破壊される歯周病へとつながります。
不正咬合には、出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)、叢生(歯の重なり)、開咬(前歯が閉じない)など、いくつかの種類があります。それぞれ原因や症状が異なり、適切な治療が必要です。
不正咬合の治療方法には、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などがあり、個々の歯並びの状態や年齢、生活習慣などを考慮して最適な治療計画が立てられます。
不正咬合によるむし歯や歯周病は、早期に発見し治療を行うことが重要です。定期的な歯科検診と適切なブラッシング指導に加え、必要に応じて専門的なクリーニングを受けることで、お口の健康維持につながります。歯並びが気になる場合は、歯科医師に相談し、ご自身に合った治療法について詳しく説明を受けることをお勧めします。
不正咬合を歯列矯正で改善するメリットとは?
不正咬合の改善は歯列を整えるだけでなく、多くのメリットが得られます。
以下で具体的なメリットを解説していきましょう。
口元のバランスが整う
歯列矯正を行うことで、歯並びの乱れや歯の隙間、受け口などが改善され、口元の見た目のバランスが整います。
特に横顔のシルエットに影響し、Eライン(鼻の先端と顎の先端を結んだ線)が美しくなることが期待できるでしょう。
例えば、出っ歯の場合は上唇がEラインよりも前に出ていることが多いですが、歯を引っ込めることでEラインが整います。
また、受け口の場合は下顎が前に出ているためEラインが崩れやすいですが、歯の位置を調整することで改善が期待できます。
口元の印象が整うことで、コンプレックスが解消され、笑顔や横顔に自信を持てるようになる方も多くいらっしゃいます。顔の変化の度合いは個人差がありますが、出っ歯や受け口など口元の突出がある症例では、変化を実感しやすい傾向があります。治療開始から半年から1年程度で変化を感じ始めることが多いようです。
肩凝りや頭痛の改善
不正咬合があると、顎関節やその周辺の筋肉に過剰な負担がかかることがあります。特定の歯や顎の位置に力が集中してしまうためです。このような状態が続くと、顎の筋肉が緊張しやすくなり、顎とつながっている首や肩の筋肉にも影響が及ぶことがあります。
結果として、血行が悪くなったり、筋肉の緊張が長時間続いたりすることで、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こす可能性があると考えられています。
特に、噛み合わせのずれが大きい場合は頭の位置や姿勢のバランスが崩れ、首や肩、背中にかけて不自然な力がかかり、緊張型頭痛や偏頭痛のような症状が現れることもあります。
慢性的な肩こりや頭痛に悩まされている方の中には、原因が特定できないケースがありますが、そのような場合に噛み合わせの問題が背景にあることも少なくありません。
歯科矯正によって噛み合わせを改善し、顎関節や周囲の筋肉への負担を軽減することで、これらの症状の緩和が期待できます。実際に、矯正治療によって体の不調が改善した例も報告されています。
歯の寿命が延びる
不正咬合を放置していると、特定の歯や顎に過剰な力がかかりやすくなります。歯並びの乱れによって噛み合わせのバランスが崩れるためです。
例えば、一部の歯に強い力が集中すると、その歯がすり減ったり、ひびが入ったりするリスクが高まります。
また、過度な負担は歯を支える骨にも影響を及ぼし、将来的に歯が抜け落ちる原因となる歯周病の進行を早める可能性も指摘されています。
歯科矯正によって歯並びと噛み合わせを整えることで、咬合力が歯全体に均等に分散されるようになります。これにより、特定の歯への負担が軽減され、歯や歯周組織へのダメージを抑えることが期待できます。
結果として、むし歯や歯周病といった歯の病気にかかりにくくなり、歯を失うリスクを減らすことにつながります。統計によると、矯正治療を受けた人は、そうでない人に比べて将来的に多くの歯を残せる傾向があるという報告もあり、歯の健康寿命を延ばす上で歯科矯正は非常に有効な手段と言えるでしょう。歯が本来持っている健康寿命を全うするためにも、適切な噛み合わせは重要な要素となります。
矯正治療のデメリットとは?
一方で、不正咬合の改善治療には、矯正装置の装着や抜歯の可能性があり、痛みや違和感が生じます。
また、矯正治療がすべて終わるまでに時間や費用がかかることから、治療に踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。
このように、矯正治療はデメリットやリスクがゼロではありませんが、歯列を整えることで得られるメリットが多くあります。不正咬合の改善を目的とする歯列矯正を行う際は、専門医のいる歯科医院へ相談しましょう。
Q1:大人が歯列矯正をした場合、顔に変化が現れるまでどのくらいかかりますか?
A1:顔に変化が現れるかどうかは個人差があります。出っ歯や口ゴボ、受け口などは顔の変化が現れやすいでしょう。顔に変化が現れる場合、歯列矯正を始めてから半年~1年で実感を得るケースが多いようです。
Q2:歯列矯正をすると顔が小さくなると聞きましたが本当ですか?
A2:歯列矯正が直接小顔効果につながるわけではありません。噛み合わせの悪さから、歯ぎしりや食いしばりによってエラの筋肉が過度に発達するケースがあります。噛み合わせを改善することによって、エラのふくらみがなくなり小顔に見える可能性があります。