子どもの不正咬合の種類と治療法とは

お子さまの歯並びが乱れていると気づいたとき、「治療した方がいいの？」 と悩む親御さんも多いでしょう。
“不正咬合”と呼ばれる歯並びや噛み合わせの異常にはさまざまな種類があり、治療の必要性や方法はそれぞれ異なります。
本コラムでは、子どもによく見られる不正咬合の種類とその治療法を解説し、不正咬合の原因となる習慣についてもご紹介します。お子さまの歯並びを改善するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

不正咬合の種類

不正咬合には複数の種類があり、症状も異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

上顎前突

上顎前突（じょうがくぜんとつ）は、上の前歯が下の歯よりも突出している状態で、「出っ歯」とも呼ばれます。前歯で食べ物を噛みにくくなるほか、発音に支障をきたすこともあります。
また、唇を閉じにくくなるため、口呼吸になりやすい点も特徴です。

下顎前突

下顎前突（かがくぜんとつ）は、下の前歯が上の歯よりも突出している状態で、「反対咬合」や「受け口」とも呼ばれます。サ行やタ行などの発音がしづらくなるのが特徴で、不正咬合のなかでも特に治療が難しい症例です。
思春期に下顎の骨が大きく成長するため、できるだけ早い段階での治療が大切です。

叢生

叢生（そうせい）は、歯並びが凸凹になっている状態で、「乱杭歯（らんぐいば）」や「八重歯」もこの一種に含まれます。不正咬合のなかで最も多いタイプであり、歯が凸凹になっていることから歯みがきが難しく、歯垢が溜まりやすいのが特徴です。結果として、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

空隙歯列

空隙歯列（くうげきしれつ）は、歯に隙間がある状態で、「すきっ歯」とも呼ばれます。特に、上の前歯の中央に隙間ができる状態は「正中離開」と呼ばれます。
歯の隙間から空気が漏れることで発音に影響するほか、食べかすの詰まりやすさから、虫歯や歯周病のリスクが高い点も特徴です。

開咬

開咬（かいこう）は、奥歯を噛み合わせた際に前歯の上下に隙間ができる状態です。前歯で食べ物を噛むことが難しくなり、その分奥歯に負担がかかります。
さらに、普段から口が開いて見えるため、見た目にも影響が出る点もデメリットです。

また、不正咬合が続くと全身に影響を及ぼすことがあります。
詳しくは以下のコラムをご参考にしてください。
不正咬合が全身に及ぼす影響

子どもの不正咬合の原因となる習慣

子どもの不正咬合は、習慣が原因となっている場合があります。不正咬合の原因になり得る習慣について見ていきましょう。

爪噛み

爪を噛む癖は歯に負担をかけるため、不正咬合となる原因の一つです。特に、子どもはストレスや退屈から、無意識に爪を噛むことも少なくありません。
日常的に爪噛みを行うことで、前歯が変形したり、歯の位置がずれたりするリスクが高まります。

指しゃぶり

3歳を過ぎても指しゃぶりの癖が続いている場合、不正咬合の原因となります。指で前歯を押すことで、上顎前突になりやすくなり、さらにその影響で奥歯の噛み合わせにも影響が生まれます。
3歳以降も指しゃぶりがやめられない場合は、親御さんが改善を促すことが大切です。

頬杖

頬杖をつく癖も、不正咬合を引き起こす原因の一つです。顎の骨や関節に偏った力が加わることで、顎のバランスが崩れ、歯並びに影響を及ぼします。
顎の歪みが進行すると、見た目にも影響が現れるため、意識的な改善が必要です。

噛み癖

食事中に左右どちらかに偏って噛む、あるいは前歯や奥歯ばかり使うといった噛み癖も注意が必要です。顎の骨や筋肉に不均等な力がかかり、結果として歯並びが乱れる原因となります。
噛み癖は無意識に身についてしまうことが多いため、日ごろからバランスよく噛むよう意識することが大切です。

子どもの不正咬合の治療法

子どもの不正咬合は、症状に合わせた治療法の選択が大切です。不正咬合の治療法について見ていきましょう。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、透明なプラスチック製の装置を歯に装着し、少しずつ理想的な位置に動かす治療法です。装置が目立ちにくいため、心理的な負担を抑えられます。
また、食事や歯みがきの際には取り外しができ、虫歯や歯周病のリスクを軽減できる点も特徴です。ただし、重度の下顎前突や複雑な歯並びなどには対応できないケースがあります。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面に装着したブラケットにワイヤーを通して、歯を少しずつ理想的な位置へと動かす矯正方法です。矯正歯科治療のなかでも細かい調整が可能であることから、多くの不正咬合に対応できるのが特徴です。
一方で、ワイヤーやブラケットの見た目が気になるという声も多く、特に成長期の子どもにとっては心理的な負担となることがあります。

また、マウスピース矯正とワイヤー矯正の具体的な違いについては、以下のコラムで解説しています。どちらの治療法がよいかお悩みの方は、ぜひこちらもご参考にしてください。
マウスピース矯正とワイヤー矯正、結局どちらがいいのか？

フェイシャルマスク・ヘッドギア

フェイシャルマスクとヘッドギアは、骨の発育をコントロールできる矯正装置です。フェイシャルマスクは、下顎前突に対して効果的です。
額と顎にパッドを当てて装着し、口の中の装置と連動させることで、上あごを前方に引き出し、あごのバランスを整えていきます。
一方、ヘッドギアは上顎前突に効果的な装置です。顎を固定するように装着することで、上顎の成長を抑えられます。
どちらも着脱は自由にできるため、フェイシャルマスクは1日12時間以上、ヘッドギアは1日8～12時間程度の使用時間を守っていれば、学校生活は通常通り行えるのがメリットです。
当院では、マウスピース矯正とワイヤー矯正を実施しています。お子さまの不正咬合を改善したい親御さんは、ぜひ気軽にご相談ください。

歯列矯正の流れについては、以下のコラムで解説しています。
子どもの歯列矯正の流れとその重要性

Q1：不正咬合の治療は保険適用されますか？
A1：一般的に、不正咬合の治療は保険適用外です。ただし、不正咬合によって健康に影響がある場合は、保険適用されるケースがあります。保険適用の可否については、一度歯科医師にご相談ください。

Q2：小児矯正は何歳からできますか？
A2：小児矯正は一般的に3歳頃から可能ですが、具体的な開始時期は歯並びや成長段階によって異なります。最適なタイミングは個人差があるため、歯科医師と相談して判断することが大切です。