不正咬合になる原因とは？歯科医師が解説
「なぜ歯並びや噛み合わせが悪くなるのか？」 と疑問を抱いたことはありませんか。
不正咬合（ふせいこうごう）は、見た目だけでなく、噛み合わせや発音、健康面にも影響を与えるため、放置せず原因を知り、対策を講じる必要があります。
不正咬合の原因には生まれつきの骨格や歯の大きさといった「先天的要因」に加え、日常の癖や生活習慣といった「後天的要因」が影響することも少なくありません。
本コラムでは、歯科医師の視点から不正咬合の主な原因を解説し、改善につながるポイントをご紹介します。健康的な歯並びを維持するために、ぜひご参考にしてください。
不正咬合の原因
不正咬合の原因には、遺伝や顎・歯の成長異常といった「先天的要因」と、指しゃぶりや口呼吸などの生活習慣による「後天的要因」が関係しています。
先天的要因｜遺伝や歯・顎の成長異常
不正咬合の原因の一つが先天的要因です。生まれつきの骨格や歯の形態に由来するもので、遺伝的な影響が大きいといえます。
例えば、両親のどちらかが出っ歯や受け口である場合、子どもにも同様の骨格的特徴が現れる場合があります。
また、顎の成長に問題があり、顎の大きさや形が不均衡な場合は、歯が正しく並ぶスペースが確保できず、歯並びが乱れる原因となります。
さらに、歯の数の異常（先天性欠如歯や過剰歯）、歯の形の異常（矮小歯や巨大歯）も、噛み合わせの悪化を引き起こす要因の一つです。
後天的要因｜生活習慣・癖による影響
不正咬合を引き起こす恐れがある生活習慣や癖は以下の通りです。
・指しゃぶり
・舌で歯を押す癖（舌癖）
・口呼吸
・頬杖をつく癖
・唇を噛んだり吸ったりする癖（咬唇・吸唇癖）
いずれも歯や顎に過剰な負担をかける行為です。成長期に長期間続くと、歯列や顎骨の正常な発達を妨げ、不正咬合の原因となるため注意が必要です。また、癖が片側に偏っている場合は、顔の左右非対称や顎の歪みを引き起こすこともあります。
さらに、乳歯の虫歯や外傷による早期脱落も、不正咬合の要因の一つです。適切に処置されないまま放置すると、永久歯が綺麗に並ぶためのスペースが確保できず、歯並びの乱れや噛み合わせの異常につながる恐れがあります。
代表的な不正咬合の種類と原因
代表的な6種類の不正咬合と、それぞれの原因となる先天的な要素・後天的な要因について解説します。
上顎前突（じょうがくぜんとつ）
上の前歯または上顎全体が前方に突出している「出っ歯」の状態です。遺伝的に上顎が大きく、下顎が小さい場合に起こりやすい不正咬合です。
加えて、指しゃぶりや舌癖などの習慣も影響します。見た目の問題だけでなく、発音や噛み合わせにも支障をきたす恐れがあります。
下顎前突（かがくぜんとつ）
下の前歯や下顎全体が前方に出ている「受け口」の状態です。原因は下顎の過度な成長や上顎の発育不足などの骨格的要因です。
さらに、癖や習慣も影響します。口呼吸や舌を前方に出す癖があると受け口になる恐れがあります。
空隙歯列（くうげきしれつ）
歯と歯の間にすき間が空いている「すきっ歯」の状態です。主な原因は、歯のサイズが小さい、または顎が大きいことによる空間過多です。
また、先天的な歯の欠如や舌の癖によって起こる場合もあります。食べ物が隙間に詰まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まるため注意が必要です。
開咬（かいこう）
上下の前歯が噛み合わず、常に隙間が開いたような状態です。「オープンバイト」とも呼ばれ、舌を前に突き出す癖や長期間の指しゃぶり、口呼吸などが原因です。
前歯が噛み合わないため、食べ物を噛む際に奥歯に負担がかかりやすく、発音にも影響する場合があります。
過蓋咬合（かがいこうごう）
噛み合わせが深く、上の前歯が下の前歯を大きく覆い隠している状態です。遺伝的な骨格の異常だけでなく、強く噛む癖や歯ぎしりが原因で起こる場合があります。
さらに、長期間放置すると顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症する恐れがあるため注意が必要です。
叢生（そうせい）
歯が凸凹に並び、重なり合っている状態です。顎の大きさに対して歯が大きい、または歯の本数が多い場合に起こります。
永久歯の生え変わり時期の異常や乳歯の早期脱落も影響します。歯が重なっている部分は歯みがきが難しく、虫歯や歯周病になりやすいため注意が必要です。
不正咬合を放置するリスク
不正咬合は、全身の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。
例えば、噛み合わせが悪い状態では、食べ物を十分に咀嚼できず、消化器官に過度な負担がかかります。また、噛み合わせによって顎の動きに偏りが生じると、一部の筋肉や関節に負担が集中します。その結果、顎関節症の原因となり、慢性的な痛みや口の開閉障害が発生するケースもあります。
不正咬合により発音が不明瞭となり、コミュニケーションに不安やストレスを感じる方も少なくありません。また、見た目のコンプレックスが原因で自己肯定感が低くなったり、人前で話すことにためらいを感じる場合もあります。
歯並びが乱れていると歯みがきがしにくくなり、虫歯や歯周病のリスクも高まります。全身の健康を守るためには、不正咬合を放置せず、早期に適切な治療を受ける必要があるといえます。
不正咬合の予防・改善のポイント
後天的要因による不正咬合は、癖や生活習慣の改善によって予防できる可能性があります。
以下の予防対策を日々の生活に取り入れてください。
・姿勢を正し、猫背や頬杖を避ける
・左右バランスよく噛み、顎の発達を促す
・舌を上顎の正しい位置に置く習慣をつける
・口呼吸を避け鼻呼吸を意識する
一方で、遺伝的な骨格の問題や先天的な形態異常による不正咬合は予防が難しく、専門的な診断と矯正治療が必要です。
不正咬合の治療方法には種類があり、口腔内の状態や理想の歯並びによって適切な治療方法は異なります。
治療方法については、以下のコラムで詳しく紹介しています。
「矯正治療の種類と方法」
歯並びや噛み合わせに不安がある方は、ぜひ当院にご相談ください。
Q1： 大人でも矯正治療は受けられますか？
A1：矯正治療は年齢に関係なく受けられます。
以下のコラムで、大人の矯正治療のメリットや注意点を紹介しているため、ぜひご参考にしてください。
「大人になってからでは遅い？矯正治療が向いている年齢」
Q2：矯正治療には保険が適用されますか？
A2：見た目を良くするための治療は保険適用外です。例えば、骨格に大きな問題がある顎変形症や、先天的な唇顎口蓋裂などの場合は保険適用で治療できます。
保険適用の条件については、以下のコラムをご覧ください。
「不正咬合は保険適用で治療できる？」
